チムチュム / จิ้มจุ่ม
チムチュムチムチュム…って3回言ってみて下さい!こびとの時計が打つ音、もしくは早口言葉のような、なんともかわいらしい名前のこの料理は、ラオスに隣接する、イサーンと呼ばれるタイ東北地方の郷土料理です。
「チム」も「チュム」も、『ちょっと浸す』という意味。タイ語では、このようにほぼ同じ意味の言葉を2つ重ねて1つのものを指すことがよくあります。
つまりチムチュムとは、スープにちょっとくぐらせて~、タレをちょいっとつけまして~、あとはパクっといっちゃって~!という、何ともお気楽な料理なのです。
と思いきや、さにあらず。イサーンと言えば、『田には米、川には魚』と謳われたほど豊かな土壌を誇るタイ国の中にあって、気候に恵まれず厳しい生活を余儀なくされてきた地方。
そのイサーン出身の出稼ぎ労働者と共にバンコクに流れ流れて、ソムタム(タイ風パパイヤサラダ)やガイヤーン(焼き鳥)と並んで今や押しも押されぬタイを代表する料理のひとつになったのが、このチムチュム。かわいい顔してなかなかの苦労人なんです。
ナンプラー、ナンキョウ、レモングラスなどで味と風味をつけたスープを、素朴な素焼きの壷に入れて炭火で熱し、お肉や魚介類、白菜、空心菜、スイートバジルなどの野菜、春雨などを放り込み軽く煮て、にんにくと唐辛子の効いたタレをつけて頂きます。
肉や魚貝の臭みはスープのハーブ類によって消され、唐辛子たっぷりのタレを付ける量を間違えなければ、とてもあっさりとして優しい味です。野菜もたっぷりと摂れ、かなりヘルシーな料理だと言えます。
生卵を肉と混ぜて投入するタイ人多し。曰く、「お肉が柔らかくなるから」。真偽のほどは分かりませんが、少なくともスープがまろやかになって美味しくなるのは本当です。
イサーンは、隣国のラオスと国境を接する地方。実は、この料理のもともとの発祥の地はラオスなのです。本場ラオスのビエンチャンでは、水ではなくココナッツの汁でスープを作るのだそう。
さて、最後に、もう一度チムチュムって3回言ってみて下さい!チムチュムのバックグラウンドを知ったことによって、かわいい響きだけじゃない、歴史の深みがコクとなってスープに加わったはず。
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記事登録日:2005-08-17