昼は豊富なランチメニュー・夜はくつろぎ居酒屋メニュー、旨い・清潔・良心価格の三拍子揃った日本料理の優良店!
サワッディーカー!バンコクナビです。世界広しといえども、時代は移り変わっても、コアラの子はユーカリを食べ、パンダの子は笹を食べるこの世の中にあって、日本人の子であるナビは、バンコクに住んではいても、やはり日本人、時には無性に日本食が恋しくなります。そこで今回は、日本食料理店がひしめくタニヤ激戦区にあって、創業28年の歴史を誇る、内容・値段ともに大充実の日本料理屋『江戸屋』さんをご紹介します。
昼の顔・夜の顔
昼と夜、2つの顔を持つ『江戸屋』。昼の魅力は20種類以上の豊富なランチメニュー、夜は定番プラスアルファの居酒屋メニュー。ランチは11時30分から14時(月曜から土曜)、夜は17時30分から23時(年中無休)です。今回は、それぞれの魅力をたっぷりお伝えするために、昼の部、夜の部、二部構成でお届けします。
● 昼
まずは昼の江戸屋からご紹介。一歩足を踏み入れると、はっぴ風のユニフォームを着た店員さんが、「いらっしゃいませ!」と威勢良く出迎えてくれます。入ってすぐのところには応接スペースがあり、待ち合わせの時や、会計を待つ際などに腰掛けられて便利。
◎ 明るい・広い・安心
太陽の光がさんさんと降り注ぐ、白木造りの店内は、高い天井とゆとりある座席配置によって、気持ちの良い開放感に溢れています。見た目のゆとりは、心のゆとりへと通じるもの。仕事からの束の間の開放を求めて、ビジネスマンが通い詰めるのも頷けます。奥のカウンターで、板前さんたちがきびきびと立ち働いているのもすがすがしく、女性のナビでも臆することなく一人で入れる雰囲気。
出されるおしぼりは真っ白。テーブルが油でべたべたしているということもありません。当たり前のことのようですが、タイではこれがきちんと出来ていないところが多いんです。そこにきて江戸屋は、従業員の手のアルコール消毒まで徹底していて、「美味しい、不味いの前に、安心ありき」という、店主の日本レベルの衛生観念が、お店のすみずみまで行き届いるのでとても安心です。
江戸屋では、日本語の読み物も充実しています。特に漫画は、マイナスイオンも敵わない、日本人ビジネスマンにとっての最強リラックスアイテム。漫画喫茶も併せて経営しているご主人ならではの、こだわりのあるラインナップが光ります。
◎ 2階はお座敷
2階には、廊下を挟んで両脇にお座敷がずらりと並びます。それぞれの部屋に名前が付けられているのが、とても風流。ビジネスでの会食らしきお客さんもゆったりとくつろげる空間。
◎ 豊富なランチメニュー
江戸屋のランチメニューは、全部で20種類プラス日替わり。圧倒的な品数と、殆ど全てのメニューが180~240バーツであるというリーズナブルさを誇ります。お勧めは、ネタの新鮮さと大きさに定評のある、ちらし・にぎりの寿司系。また、カツ丼、天丼、牛丼、鉄火丼と、どんぶりものが豊富なことも見逃せません。
オプションで、温泉玉子(50バーツ)・おろし山芋(80バーツ)・納豆(50バーツ)・ランチ生ビール(70バーツ)が付けられるのも嬉しいですね。
◎ サイドメニューもぬかりなし
お昼時、店員さんたちは大忙し。奥の専用カウンターから次々と出てくる料理をお盆に乗せて、お客さんのもとへ。笑顔できびきびと動き回る彼女たちの姿が印象的でした。加えて、お茶が減っていればすかさず注ぎ足す、サービスの決め細やかさも兼ね備えています。ナビはぴたりとカウンター横に張り付いて観察していましたが、やはり、お寿司系と丼ものが良く出ていました。江戸屋のランチの良いところは、サイドメニューにも決して気を抜いていないところ。この日の小鉢、ふろふき大根の湯葉あんかけも、とっても美味しそう。
◎ ボリューム満点!ちらしセット
今回ナビが食べたのは、ちらしセット(並)240バーツ。海老、イカ、サーモン、はまち、しめサバ、とにかく1つ1つのネタが大きくて厚みがありボリューム満点。さらに、桜でんぶやすじこに加えて、ご飯にごぼうやにんじんの甘煮がまぶされていたのには驚き!ランチメニューがここまで凝っているのは珍しい。また、「美味しく、かつ健康によいものを」という店主の意向が、無着色のガリに表れています。このちらしに、だしの効いたお味噌汁・しゃきしゃきサラダ・大きめ冷奴・お漬物が付いて240バーツは、本当に価値があります。
一緒に行ったナビの友達も、鯖の塩焼きセット(170バーツ)の鯖を、「肉厚で皮はぱりぱり!」と、ご飯と一緒に元気よくほおばっていました。ちなみにご飯は、米どころ北部チェンマイで栽培された日本米を使用しているそう。
そして最後にはフルーツと飲み物がついて、お昼といえどもゆったりと食後の余韻を楽しむことができます。
★ 夜
日が沈んだ後、夜の江戸屋は、しっとりと落ち着いた雰囲気。のれんをくぐると、艶やかな着物姿の店員さんたちが「いらっしゃいませ」とお迎え。
新鮮な材料が並ぶ板場や焼き場では、ナビの視線も何のその、調理人さんたちが、真剣な表情でそれぞれの持ち場を担当しています。タイ人は普段はにこにこしているだけに、彼らが真剣な面持ちで手元に集中している様子は、ナビの目にはお寿司のネタと同じぐらい新鮮に映りました。
☆ 名物“親父”高橋店主
江戸屋を語る上で欠かすことができないのが、従業員に“お父さん”と呼び慕われる、ご主人高橋さんの存在。江戸屋の豊富なメニュー展開も、新鮮な材料の調達も、高橋店主の料理人としての確かな腕と、人脈があってこそ。もともと科学工学の、大さじ・小さじではなく0,001cc単位のマニュアルの世界にいた高橋さん。硬水のタイで軟水の日本料理を作る難しさを、ナビにも分かる言葉で理論的に解説して下さいました。
その一方で、メニュー考案に関しては、「何をどうすれば美味しいのかは、感覚で分かる。材料をこねくりまわすのは好きじゃない。」と、天才肌を遺憾なく発揮。「料理人の自己満足が、お客さんにとっての幸せだとは限らない」と語る高橋店主の様子から、『お客様第一』の江戸屋の謳い文句に嘘はないと納得したナビ。料理人としての自信に甘んじず、それを食べる立場の人に還元しようという謙虚さに、人間としての器の大きさを感じました…と言えば、「褒めすぎでぃ」という高橋店主の声が聞こえてきそうですが、ナビは本当にそう思いましたよ。
「大抵お店に出ているので、気軽な挨拶からメニューに関する我が儘まで、何でも声をかけて下さい」という言葉を頂き、頼もしい限りです。
☆ 最強居酒屋メニュー
さて、そんな高橋店主による夜のメニューは、どれもこれも抗い難い磁力を放つ、居酒屋メニュー。『江戸屋』の売りは、とにかく新鮮な魚介類。メニューを何度も往復しながら食べたいものをピックアップしていくと、自然と魚介類中心のオーダーになりました。また、お酒類の種類の多さも、『江戸屋』の大きな自慢のひとつ。日本酒と焼酎は常時20種以上取り揃えています。飲み残した分は、冷蔵庫で風味を損なうことなくキープしてもらえるのも嬉しい。他のお店が、いかに回転率を上げるのかに頭を悩ませているのに対して、『江戸屋』の目標は、「お客を帰さない」こと。長居してもらい、安心して酔える店づくりを目指しています。「江戸屋は、今夜の俺には最高に良い店、でも翌朝の俺には悪い店」という冗談を言って高橋店主と笑う常連さんの姿も見かけました。
★ 槍いか下足刺身 120バーツ
では遠慮なくいただきましょう。まずは、槍いかの下足のお刺身。自称バンコクのトップ・グルメナビゲーターで、江戸屋の常連であるナビの上司が太鼓判を押す一品です。でも実はナビ、イカのお刺身が苦手。「ここのは大丈夫だから!」という上司の言葉に半信半疑で口に入れて見ると、あれ?臭みが全くありません。こりこりの食感を楽しんだあと、後味として残るのは、まったりとして深いイカの旨み…。実は、臭みの原因となる汚れは、足の先っぽの吸盤に溜まるのだそう。固くて舌に残るのも、この部分。ナビがイカのお刺身を苦手とする理由はまさにそれだったのですが、江戸屋では下処理で足先の吸盤を全てきちんと取り除いているから、臭みやぬめりとは無縁。1日限定12食なので、早い者勝ちです!
★ もっちり豆腐 80バーツ
なめらかふるふるで、まったりコクがあるもっちり豆腐…。ごま豆腐よりもクリーミーで、甘めの出しとよく合います。何でできてるんだろう?それは秘密かな?などと思いきや、おお!「牛乳をくず粉で固めました」とメニューであっさり種明かし。「教えちゃっていいんですか?」というナビに、「レシピは盗めでも、味のコンセプトは盗めないでしょ」と、涼しい顔の店主。「レシピなんて死守するもんじゃないよ」という高橋店主に、「格好良い~」とナビ、またもや心の口笛を吹きました。
★ 蛸・鱸カルパッチョ 220バーツ
ナビを竜宮城へと誘う、見た目も鮮やかなタコとスズキのカルパッチョ。素材の新鮮さもさることながら、酸味控えめのさっぱりした味付けに感動。酸味の強いタイ料理に慣れたナビの舌の上で、タコとスズキが優雅に踊ります。このカルパッチョのドレッシング、バルサミコ酢を使ったこともあるけれど、それだとどうしても重い味になってしまい、梅酢と赤じそを使ったこの軽いのに芯の通った味に行き着いたのだそうです。
★ 揚げ豆腐サラダ 250バーツ
一口大に切って揚げた豆腐、トマト、レタスに温泉玉子を乗せ、江戸屋特製のマヨネーズをかけて頂く、揚げ豆腐サラダ。温泉玉子を崩す瞬間はちょっと緊張…。この、とろとろの黄身と、マヨネーズが絡んだ揚げ豆腐の、まったりして滑らかな甘みといったら!ぱりぱりに揚がったシュウマイの皮が名脇役です。
玉子とマヨネーズのクリーミーさに負けない、揚げ豆腐の甘辛いコクの秘密は、鰻のタレをからめているから。『江戸屋』の知恵と技が詰まったサラダです。
★ 海鮮串揚げ盛り 300バーツ
さくさくの衣に包まれた、帆立・海老・鮭・イカ・カキの揚げ物。どれもこれも、海鮮の旨みがぎゅっと詰まっていて、一口かじれば、磯の風味が口いっぱいに広がります。ぱくぱくいけてしまうのは、いい油を使っている証拠。付け合せのサラダのドレッシングも、もちろん自家製。サラダごとに変えているという、『江戸屋』のドレッシングのバリエーションにはうなります。
★ 帆立グラタン 250バーツ
帆立の甘みと旨みを凝縮した一品。ほろほろと崩れるのに歯ごたえ満点の帆立を包み込む、優しい味のホワイトソース。中に敷かれているほうれん草にも、帆立の旨みがしっかりとしみ込んでいました。
★ 鰹の刺身 380バーツ
見てください。この、ルビーのように光るきれいな赤色を。「刺身は、切り方によって味が変わる。」というご主人。白身は薄めに、赤身は厚めに切るのだそうでですが、ぶ厚ければいいというものではありません。薬味を落とした醤油をちょっと付けて口に入れると、鰹の、舌にまとわりつくような濃厚な旨みが舌の上に広がります。
薬味は、生姜とニンニクをお好みで。ナビは、高橋店主のお勧めに従って、ニンニク醤油でいただきました。
「1度食べた味は忘れないし、その味を再現する自信がある」と語る高橋店主。一流の音楽家は皆、どんな音もドレミの音階で聞き分けられるという“絶対音感”を持ち合わせていると言います。そんな“絶対音感”ならぬ、“絶対味覚”があるとすれば、高橋さんは間違いなくその持ち主であると深く頷きつつ、『江戸屋』を後にするナビでした。