スタッフは女性のみで優雅な空気。スコータイホテルの中にある『幸せ』という名のバーで、幸福なグラスを傾けましょう!
サワッディーカー、バンコクナビです。
突然ですが、ナビはある決心をしました。来月で26歳の誕生日を迎えるナビ、もう、「童顔だね」「若く見えるね」と言われて喜んでいるわけにはいきません。そう、ナビの決心とは、“大人になること”。何事も形から入るナビ、大人といって真っ先に思い浮かんだイメージは、ホテルのバーでグラスを傾ける姿。ならばシックなことで有名なスコータイホテルの中にある『スック・バー』で決まり!というわけで、善は急げ、『スック・バー』のツールに腰掛け、ナビ的大人考をしてきました。
◎ 場所はスコータイホテルの中
『スック・バー』があるのは、バンコクの数あるホテルの中でも指折りの、格式ある正統派・スコータイホテルの1階。スコータイホテルがあるのは、シーロムの南側、サトーンと呼ばれるエリア。行き方は、まずBTSサラデーン駅4番出口/MRTシーロム駅2番出口からでて、ソイ・サラデーンをサトーン通りに出るまで歩きます。サトーン通りに出たら反対側に渡り、左に進むとホテルがみえます。ぎりぎり徒歩圏内ですが、約15~20分と、結構な距離を歩くことになるので、サラデーン/シーロム駅からタクシーに乗ってしまうのもおすすめです。
スコータイホテルといえば、ナビがタイの大学の留学生だったころ、教授の結婚式がこのホテルの中庭で行われ、ティーパーティー形式の結婚式のその優雅さに何度もため息をついたもの。その思い出に浸りつつ、レセプションを背にしばらく進んだ右手に、『スック・バー』の入り口が見えてきました。中央には“ラカン”と呼ばれるタイ式の鐘が威風堂々と吊り下げられていて、おごそかさをかもし出しています。
◎ 大人の空間
『スック・バー』の中は、ベージュやグリーンブルーで統一された、甘すぎず、かといってスタイリッシュすぎて気後れすることもない、シンプルで粋な大人の空間。カウンターの、宝石のような深いエメラルドグリーンの天板が印象的です。
全部で60席ある客席は、周りを気にせずプライヴェートな話ができる距離を保って置かれています。この空間の『間』が話の『間』になって、喋りすぎない大人の会話が生み出されるんです。
食前に立ち寄って、これから始まる素敵な夜の予感に乾杯するのもよし、食後に来て、ゆったりとグラスを傾けながら1日の余韻を楽しむのもよし。どんな気分やシチュエーションにも寄り添ってくれる、謙虚さと誠実さが感じられるこんな雰囲気の中では、“正しい”酔い方ができそう。たとえば、普段はしないような人生に関しての真面目な話も、ここでは自然にできそうです。真面目な話を茶化さずにできてこそ、大人たるゆえん。
午後9時30分から閉店の午前1時までは、専属DJのセレクトによる音楽を楽しむこともできます(日曜日を除く毎日)。
◎ 『幸せ』が名前の由来
『スック・バー』の『スック』は、タイ語で“幸せ”を表す言葉。
日本語の“幸福”だと固くて大げさな感じが、そして英語“Happy”は逆にどことなく能天気な印象を受けますが、タイ語で表現された『スック』は、エキゾチックでシックな響き。
そして、何が“幸せ”なのかは人によって色々であるということを象徴するかのように、『スック・バー』に置かれているメニューは、とっても豊富。
まず、メニューを開いたページトップに葉巻の銘柄が並んでいるところで、煙のように漂う大人の雰囲気にくらくら。実際に注文するかどうかではなく、心の余裕として眺めていたくなります。(葉巻:Bolivar680バーツ、Vegas Unicos850バーツ)
カナディアン・アイリッシュ・ジャパニース・タイと揃っているウイスキーは1杯250バーツ~、ワインの種類も白・赤ともに豊富(グラス1杯400バーツ~、1本2000バーツ~)、“マイタイ”や“ピナコラーダ”などのカクテル類は300バーツから飲むことができます。ジン・ラム・ウォッカ・テキーラもそれぞれ数種類が常備揃っていて、至れに尽くせり。
「アルコールなしでも雰囲気や会話で酔えちゃうの」、という方には、トニックウォーター(120バーツ)やフレッシュオレンジジュース(160バーツ)などのノンアルコールドリンクや、コーヒー・紅茶(160バーツ~)もあります。
◎ スタッフは、女性オンリー
そして、『スック・バー』の雰囲気作りの一端をになっているのが、モスグリーン色をしたタイ風巻きスカートのユニフォームを身にまとったスタッフたち。そう、『スック・バー』のスタッフは、女性ばかりなんです。
“リラックス”をモットーにする『スック・バー』では、女性の優雅さ、しなやかさを最大限お店に反映するため、スタッフは女性オンリー。
しかも、誰が何を担当、と役割がきまっているのではなく、案内からシェイカー振り、会計まで、彼女たちみんなが全ての仕事をこなすことができます。なので、ふと呼び止めた店員さんに「お待ちくださーい」と担当者が来るまで待たされる、ということがありません。その、途切れない一連の『流れ』こそが、大人の雰囲気を演出する上で要であるということを『スック・バー』はちゃんと分かってるんですね。ますます安心して酔えそうです。
カクテル
■ STRAWBERRY SHAKE 360バーツ
では早速、その女性スタッフの手で丁寧にシェイクされた『スック・バー』自慢のカクテルを味見しましょう。
トップバッターは、甘いストロベリーの香りを振りまきながら運ばれてきた、【ストロベリーシェイク】。ベイリーズのアイリッシュクリームとストロベリーリキュール、ストロベリーピューレという、名付けて“無敵のベリートリオ”が、1:1:2の割合でブレンドされています。フレッシュなストロベリーのピューレの新鮮さな甘ずっぱさが、口の中ではじけんばかり!アルコール分は抑えめで、お酒が苦手な人にもお勧めです。
■ BERRY CAIPIRINHA 350バーツ
こちらも、人気のカクテル【カイピリーニャ】。
【カイピリーニャ】とは、ポルトガル語で“田舎の娘さん”という意味なのだそう。通常このカクテルは、サトウキビのお酒“CACHACA”にライムを絞るだけの素朴なものですが、そこにラズベリーピューレが加わった、“ちょっと垢抜けた田舎の娘さん”が『スック・バー』オリジナル。たっぷりのライムとシュガースティックが添えられています。シュガースティックを手に、紫と透明の2層を崩すのは、緊張と至福の瞬間。ライムとお砂糖で風味がぐんと豊かに広がります。【カイピリーニャ】に使われているお酒“CACHACA”は、ブラジルで広く飲まれている国民酒的お酒で、“カシャッサ”と読むのだそう。蒸留酒らしく、口当たりは日本の焼酎と似ていてクセはありませんが、アルコール度が50度近いということで、ひとくち飲めば、もうそこはブラジル、サンバを踊りたくなる陽気な気分に包まれます。
■ THAI THAI 350B
最後は、『スック・バー』オリジナルの新カクテル、『タイタイ』。その名の通り、タイをイメージした、まだメニューにも載っていないニューフェイスです。ウォッカをベースに、ミントリキュールを加え、ミントクリームを底に沈めてできた薄いみどりのグラデーションが涼しげ。いかにもさわやかな見た目ですが、ベルガモットの皮を飾り、挽いた黒コショウを浮かべた、実はとってもスパイシィなカクテルです。
ミントの爽やかさと黒コショウのパンチが、不思議なほど喧嘩せず喉をすべっていく感じに、社交上手なタイの国民性を重ねあわせたナビ。
また、黒コショウは、古くコロンブスの大航海時代から珍重されてきたスパイス。アジアが辿ってきた歴史をも感じさせるカクテルです。
フード
■ 牛ほほ肉とのフライパンプキンソース、トリュフ添え 350バーツ
Braised Beef Cheek Ball,Pumpkin Puree, Black Truffle
続いては、お酒と共に食したい特製フュージョン・ディッシュ類のご紹介。
まずは、牛肉のほほ肉を丸めてフライにしたもの。ほほ肉独特の歯ごたえをほどよく残したミンチのフライに、とろりとした甘めのかぼちゃのソースが絡んで、まったりと舌を包み込みます。
丸いフライのその頭上には、食べ物として生まれたからには一度はかぶりたい、トリュフの王冠が君臨しています。そのトリュフのコクのほろ苦さが、何かを宣言する王様のように、味にコクと品を与えています。また、パン粉がとても細かいので、中身の牛肉の風味がより一層引き立っていることも、トリュフと同じく見逃せないポイントです。
■ ポレンタの3段重ね 350バーツ
3 Times Polenta
ポレンタというのは、トウモロコシの粉を練ったもので、焼いてよし、蒸してよし、揚げてよし、イタリア料理の前菜や付け合せにはとてもよく使われる素材なのだそう。
『スック・バー』のポレンタ料理は、贅沢に三段重ね。上から、ポレンタとリコッタチーズのムース、タラとポレンタのフライ、ポレンタと干しエビの蒸しもの、と見た目にも鮮やかな3種です。ふわふわ、さっくり、もっちりと、どの段も食感や風味が違っていながらもトウモロコシの香ばしさでつながっていて、ポレンタの風味を色んな角度から満喫できる1品です。
■ ほっき貝のオードブル 350バーツ
Hokkigai Clams
リコッタチーズ・サーモン・ほうれん草・マスタードを詰めたほっき貝に、ブロッコリーソースをかけ、トリュフを散らしたという、海の幸・山の幸の集大成である1皿。ほっき貝のしっかりとした噛み応えと、中身のクリーミーさのコンビネーションが、新しい食感を生み出しています。ブロッコリーソースの爽やかさで、生ものが苦手な人でもぱくりと食べられてしまえること請け合いです。
◎ 凄腕シェフ
『スック・バー』で供される料理を取りしきっているのが、弱冠35歳にしてスコータイホテルのエグゼクティブシェフをつとめる、ベトナム出身のナムさん。
何気なくナムさんの生い立ちを聞いたナビはびっくり。ベトナムに生まれたナムさんは、幼少の時にベトナム戦争の戦火を逃れるため、親戚がいるデンマークへ。その後しばらく住んだデンマークにはナムさんのお母さんの口に合う食べ物がなかったため、自らシェフになることを決意。その後の歩みも決して平坦ではなく、USアーミーなどを経験しつつ、ノルウェー→ニューヨーク→シンガポール→ロンドン→バリでの在住を経て、現在に至るのだそう。世界をまたにかけるとは、まさにこのこと。映画が1本撮れそうな、波乱万丈の人生の片鱗を微塵も感じさせない穏やかなたたずまいに、本当にすごい人は気張った空気を出してないんだなぁと感心するナビ。そしてナムさんの奥さんは日本人だと聞いて、またも驚き。奥さんとは英語で会話するため日本語は話せませんが、シンプルで力強い日本の心はとても尊重していて、それを料理に生かすことを、常にこころがけているそう。ナムさんの話を聞きながら、『あっぱれ』という、普段使わない日本語がこころいっぱいに浮かんだナビでした。
さて、“幸せ”という名の『スック・バー』のご紹介、いかがでしたでしょうか?
その昔、『幸せは~歩いてこない、だから歩いて行くんだよ~♪』という唄が流行りましたが、まさにその通りで、大人の時間、大人の幸せは、自分で歩いて見つけなければいけません。大人の時間が流れる『スック・バー』で、幸せとは何かを、美味しいお酒で満たされたグラスを前に大切な人と語り合うことこそ、幸せに向かう行為ではないか…などと、いつになくロマンチックな思いを巡らせながら、大人への階段を一段登ったような気になったナビなのでした。